真白麻希のどんとこいTS

TS作品をレビューしていくバーチャル何がしらです。

【創作短編TS小説】かわいいお人形さん

またも短編小説。

あ、タイトル凄い雰囲気ありますけど、

気軽にお読みください。重い話は無いです。

(私が書けないだけ)

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

彼の名前は隆一。

機嫌が悪くなると周りの物を殴る癖がある。

 


そんな隆一の目の前から、ガラの悪そうな大男が現れ…

隆一の肩にぶつかった。ケンカ売りのそれである。

 


「あー、いてぇいてぇ

どこのどいつだ?目ん玉使わずボケっと歩いてるバカは」

「目の前の俺だ」

言うが否や、隆一のひねりを聞かせたパンチが、

大男の顔面に直撃し、身体を数cm飛ばした。

「ぼへあっ!!!」

大男はマヌケな声を出して気絶した。

歯が数本折れている。

「気分悪ぃ、寝てろ」

隆一はボソッと吐き捨てると、その場を離れた。

 


「…んあ?」

人気の少ない、裏通り。

普段はめったに一般人の通らないこの場所に似つかない、

一人の少女が立ち尽くしていた。

「おいガキ」

「…?

何です、名前の分からないお兄ちゃん?」

少女は聞き返してきた。小学生ぐらいの子だろうか。

「ああ?そりゃお前…

こんなトコにガキ一人で居るとあぶねーって話だ、家で寝てろ」

「まあ、口に似合わずお優しいんですのね」

「…ぶっ飛ばされてぇのか、お前」

すごむ隆一に構わず、くすっと笑った少女は、そのまま一礼した。

「はじめまして。

わたくし、ドルチェといいますわ、どうぞよろしく」

「ドルチェ…?なんだお前よそ者か」

この辺りでは聞きなれない名前の雰囲気である。

おそらく何処か遠い場所から旅行でもしに来たのだろうと隆一は考えた。

「旅行…まあそんなところですわね。

お兄さん、お名前は?」

「…隆一。」

「ふふふ。隆一さん…ですね。

隆一さん、あなた何か困ってることはありませんか?」

「ねぇな」

「…ふえっ!?」

即答だった。

あまりの速度と予想外の答えに、ドルチェは少し遅れて変な声を上げた。

「…なんだよ、悪ぃか?」

「い、いえ…コホン。

と、とてもいいことだと思いますわ。悩みがない。ええ素晴らしい。」

「はあ。もう帰っていいか?」

「ちょーーーーーーーっとお待ち遊ばせーーー????

はい!こっちを見る!注目!」

ドルチェは目に見えてわちゃわちゃしている。

「あのなぁ、俺ぁお前のおままごとに付き合ってる時間ないんだ。

わかるか?とっとと帰りたいんだよ」

「ぐっ…!わ、わたしをそんな憐みの目で…!

も、もう分かりました。まどろっこしい事は抜きです!」

そういうと、ドルチェは自分のカバンからゴソゴソと、

メイド服を着た女の子の人形を取り出した。

「はあ…人形遊びか?さっきから言ってるけどな…」

「ふふふ…本当はアナタの望みの姿に生まれ変わらせてあげる予定でしたが、

決めましたわ…今からアナタは私の可愛い召使…」

ドルチェは不敵な笑みを浮かべながら、不思議な言葉をつぶやき始めた。

「な…なにを…おわっ!?」

ドルチェの身体と、人形と、そして隆一の身体が宙に浮かぶ。

床に視線を向けた隆一は、自分の真下に大きな魔法陣のような何かが浮かび上がっているのが見えた。

「ま…魔法使いか…このガキ…!」

「あはははははは!わたくしのいいなりになるがいいですわ!」

ドルチェは、メイド服の人形を手に掴み、その人形で隆一の頭部を強打した。

「がっ…!?」

隆一の意識は、そこでいったん途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「…んぁ?」

隆一は、見知らぬ場所で目を覚ました。

軽く見渡すと、小奇麗な部屋であることがわかった。

「どこだ…ここ…」

隆一がつぶやくと、聞き覚えのある声が聞こえた。

「目が覚めたようですわね」

「この声…あのガキか、いったいどこから…のわっ!?」

隆一の視界の下から、巨大な人物が顔を出した。間違いなくドルチェだ。

しかしなぜか、先程見た大きさの3倍以上の大きさに見える。

「お、お前…なんでそんなデカく?」

「違いますわ…あなたが縮んでいますのよ

私の可愛い【お人形さん】。」

ドルチェは、大きな鏡のような物を取り出し、隆一に見せてきた。

そこにうつる隆一の姿は…"隆一の姿ではなかった"。

「…おい、だれだこの女は」

「あなたですわよ?」

「嘘をつけ。俺は男だ。」

「だから女の子にしてあげましたの。」

「はぁああ???」

鏡にうつる、メイド服を着た女性の姿。

肩にかかるぐらいの長さの青い髪に、

目つきが悪く不愛想な顔は、おしとやかで愛らしい顔に、

そして、メイド服の胸辺りの布をツンと押し上げるソレ。

どれも隆一の身体にはなかったものであったが、

自分の動きに合わせて、鏡の中の女性も同じように動く。

「折角可愛らしくなったのですし、新しいお名前をつけなくては!

そうですわね…チィルとかいかがでしょう!

小さなメイドとして、あなたにはずーっと私のこのお城で、

一生懸命働いてもらいますからね…あははははは!」

ドルチェは早口で楽しそうにしゃべり切った。

「こ…この…」

それを聞いたかどうか、隆一は目の前に出された鏡に向かって飛び掛かった。

「あら、今のあなたの小さな身体じゃ、

わたくしになんにも手出しできませんわよ?

せいぜい痒いあたりが限界ですわ。」

「うっせぇ!!!!」

バキィッ!!!

人形メイド少女は思いっきり、鏡に向かって全力で拳をぶつけた。

「へっ…」

予想だにしなかった衝撃が、手に持った鏡からドルチェの身体に伝わり…

ドルチェの持つ鏡は、部屋の遠方まで弾き飛んだ。

「…」

「なんだ、力はまんまじゃねぇか」

「…ぼーぜん」

ドルチェは呆然としていた。改めて地の文で書いてしまう程である。

 


「できるかぁーーーっ!!!」

「ひいいいいっ!!」

【チィル】の手から、自身身長の何倍もある箒が、

ドルチェに向かって勢いよく飛ぶ。

ドルチェはなっさけない声をあげながら、すんでの所でかわした。

「ス…ストライキですの!?

お掃除しなければ今日のご飯は抜きですわよ、チィル!!?」

「その名前で呼ぶな」

げしっ。

チィルはドルチェの膝を下から軽く小突いた。

「あたっ!!

…うう…今日は折角あなたの好きな肉まん鍋ですのに…」

「うっし、5秒で終わらせる。

おら、とっとと台所行けダメ主人」

チィルはそういうと、先程蹴とばした箒を拾い上げ、

てきぱきと周囲を清掃し始めた。

「まぁ、ほんとご飯にだけは甘い人…」

「はやく支度しろ」

ぽかっ。

箒の柄の部分で、ドルチェの頭を小突くチィル。

「ひぃん…分かりましたわよ…」

あらから数日後。

隆一はチィルとして、ドルチェの屋敷でメイドしたりしなかったりしつつ、

不自由なく暮らしていたのであった。

ドルチェの魔法は、人形から人に戻すことはできないと説明を受けてから、ふっきれていたのだ。

「さ、ご飯ができましたわよ」

「…お前、飯の腕だけはいいなホント。

恋人とか作らねぇのか。」

「そうですわね…

可愛い女の子みたいな男の子がいたら、考えてあげてもいいですわ」

「聞いた俺がバカだった…

おい、今日はまたこの間みたいに料理に何か仕込んでないだろうな?」

「どどどどどどどどどうしてそんなこというのかしら???」

「はぁ…作り直せ主人。早く。」

二人は、そこそこ仲良く暮らしてましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[真白さんメモ]

またギャグになってしまいましたとさ、ちゃんちゃん。

ついに地の文までふざけだしました。

なんかもう…私はそういう星の元に生まれた…

 


ドルチェちゃんは見た目年齢11歳とかですが、

実年齢は300から数えることをやめた不老の魔法(人形)使いです。

得意魔法は、人形と人の身体を同化させること。

元の人間の身体と魂を小さく圧縮させて人形に憑りつかせます。

そのため、微妙に元の人間の特徴が現れることも稀に。

この魔法を使うときは、人形で人間の頭を強打することで発動します。

ちなみに、チィル(隆一)には人形から人間には戻せないよーと説明していますが、まあ…どうなんでしょうね…

 


お察しの通り、魔法と料理以外はポンコツです。

マウント取りかけて取れないそんな感じ。

暇なときはお城を抜けて、いろんな所で人の悩みを聞くふりをして、人形の身体を与えてイタズラするという、暇つぶしをしています。

チィルと暮らすようになってからはやらなくなりました。

白髪で紫色の目をしています。

 


チィルさんは、隆一の時点でバカ力(ぢから)だったのですが、

人形の身体になったことで身軽になり、何故か機動力もアップしました。

人間を持ち上げることはちょっと厳しいですが、

普通の人間が使う用具類は軽々と扱えます。

ちなみに元から掃除が好きで、休日は暇さえあれば自宅を掃除していました。

「イライラした気がまぎれる」んだそうです。なのである意味天職かも。

ドルチェちゃんのことは「主人」と渋々呼ぶようになりました。

一応ご飯作ってくれるので感謝はしてる様子。

 


ドルチェちゃんが食事に盛った薬で、いろいろ大変なことになりました。

その辺のお話はまた機会があれば。

 


まあ…肩の力を抜いて読めるお話にはなったと思います。

本当はお絵かきとかできたらなお良いんでしょうけどね。

そのあたりはにんともかんとも。

ビジュアルは皆様のご想像にお任せします。